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最後の暗室レッスン

夏休み前に一人の生徒が「フィルム現像をやりたいのですが…」とやってきた。この十年以上、デジタルカメラになってから、僕以外に暗室を使うことはなく、珍しい生徒もいるもんだ、とフィルムの巻き方から現像までざっと教えてあげた。
その生徒が久しぶりにやって来た。肩にはNIKON FEを下げている。「3本撮ったので現像できますか?」と言う。実はこのところの片付け作業で暗室内も随分いろいろな物を捨てた後なのだが、折角なので、T-maxの希釈現像液を用意し、他の薬品もシンクに並べた。

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片付け中にでてきたTIME-LIFE社の「プリント」編を見せながらおさらいし、電気を消す。僕が一本巻き終わってしばらくして彼も終わる。もう一本が途中でうまく巻けずギブアップの様子。僕の手に渡してもらい手探りで調べると、巻きはじめでリールの溝から外れているのを確認。結局僕が始めから巻き直すことに。こればっかりは慣れるしかない、といっても暗室はもうなくなってしまい、今日がラスト・レッスンなのだ。

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彼が最初に巻いたフィルムは途中でくっ着いていて、何コマか現像されていなかったが、ますますフィルム現像に興味を持ったようだ。「残念ながらちょっと遅かったね。もう少し早く来たらプリントまで教えてあげることができたのに…」退職三日前に訪ねて来てくれたお礼にNIKKOR 135mm望遠レンズを差し上げる。


様々な物の間から古いポラロイド写真が出て来た。部屋の様子と髪の長さから見て勤め始めて間もない頃撮った写真の様だ。この頃、僕の英語力の弱さをカバーするために、数人の日本人高校生が部屋でたむろっていた。苦手な電話を取ってもらう代わりに漢字を教えてあげたりしていた。みんな今では出世して、KazはS社の副社長、JonはディスクジョッキーだけではなくTVでもよく見かける。あの頃小学生だった子が親になって、子供の参観日にやってくるの見ると、35年の長さを実感してふと溜息が出る。
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